遠い箱

精神障害を持つアラ60のヘンテコな毎日と、日々変化する心情を綴ります。

正当な怒りって? ⑶

r-elle.hatenablog.com

対応が最悪と思えた薬局のM氏に、預けた自立支援医療費支給認定申請書と処方箋を今すぐ家に届けるよう命じた傲慢な私。


自宅前でM氏の到着を待っている間、私のイライラは若干おさまってきた。
それでも今回の件はうやむやにしたりせずに、スッキリとした結論を出そうと思っていた。我が家から当該薬局は徒歩で3分程度だろう。すぐに出ると電話口で約束したM氏であるが、到着は10分以上かかった。

白衣を脱いだM氏は、スーツ姿で自転車に乗って現れた。その顔はニヤついていて申し訳なさは微塵も感じられない。その表情に私の怒りは再燃する。


「ここまで何分かかってるんです? すぐに出るって...蕎麦屋の出前じゃあるまいし」
途端にヘラヘラ顔が神妙な面立ちに変わったM氏。
自転車に跨ったまま「持ってきました」と自転車のカゴに乗せた書類を指差す。自転車の中の書類を、私に「取れ」と言うのだろうか?


「で?」と、私。
「は?」と、M氏。
「今回の件について、何か言うことはないのですか?」と尋ねると、「いや...自立支援と処方箋を持ってくるように言われたので、こうやって持ってきたでしょう?」
「当たり前じゃないですか? 当然のことをして、何を開き直ってるんですか?」
「普通は持ってきませんよ」
「そりゃそうでしょう? 普通は預からない書類を預かって、しかも普通なら処方すべき薬を出さないんですから、今回の対応ではそれくらいしても当然なんじゃないですか?」
「いや、事前に連絡をしてもらえないと薬は用意できないから...」
「は? 事前に連絡する必要はないとSさんも仰っていましたよ?」
「いえ、薬の在庫がないからってメールもしたじゃないですか? 突然来られても...」
「突然って、あなた...役所には2月19日に申請して、事前にアプリのお薬手帳の登録も済ませてありますよね? お宅から申請承認も得ていますが?」
「いや...けれど本日はメールでお知らせしました」
「メールにあったのは『自立支援の処方箋だから登録されている薬局へ行くよう』に、でしょ? その通り私は登録している薬局へ行った迄です。N薬局に登録がしてあったでしょうが、2月19日の時点で。何日経ってると言うんです?」
「いや突然では薬を用意できないから...」
「だから突然ではないでしょ? 薬の用意ができないなら、そう連絡すべきではないですか? そんな連絡一切ありませんでしたよ? 第一過去に薬局を変えた場合もスムーズに対応してもらっていましたよ?」
「そうですか...今までは役所から連絡していたんじゃないですか?」
「それでは今回は役所側の手落ちだと言いたいんですか?」
「...そうですね」
「先ほど健康保健センターの担当者と話しましたが、通常は役所側で薬局に連絡や書類送付はせず、自立支援医療費支給認定申請書の提示だけで処方されるという話でしたよ?」
「いや、そんなことはないです。いつもなら事前に知らせは届きます」
「...あなたね、さっきからコロコロコロコロ言うことが変わっていますね。ところであなた管理者なの?」
彼のネームホルダーには、そのように表示されている。
「はい、Mと申します」
「管理者がそれって....Mさん、あなたスマホはお持ち?」
「え? 持ってますよ」
「じゃ今すぐ健康保健センターへ電話して、担当に今の件を確認してください!」
「え?」
「こうやって話していても、Mさんは場によって言うことを変えるから信用ならない。ここで今すぐ保健所の Sさんに電話で確認してください」
「は...え...」
「早く! 役所の営業時間が終わっちゃうから早くして! ほら! 今すぐ電話する!」


ここでやっと自転車から降りたM氏は胸ポケットからスマホを取り出した。苦虫を噛み潰したような顔でM氏がスマホから健康保健センターへ電話を入れる。電話はS氏に繋り、M氏は話し始めた。


「いや...そちらから書類が送られてきていないので...え? いやいつもは書類が送られてくるような...はい、え? はぁ...」
S氏がどのように対応しているのか、S氏の声は私には一切聞こえて来ない。私は通話中のM氏やS氏に聞こえるように、
「S氏との話が済んだら私に電話を変わってくださいね!あなたはすぐに誤魔化そうとするから」と少々大きな声で伝えた。


そしてM氏はS氏との会話を済ませ、スマホを私に手渡した。
「やはりそちらから薬局へ書類の送付はなさらないんですよね?」
「その通りです」
「この期に及んでMさんはまだ、そちらに責任をなすりつけようとしているんですよ? この方、最低です。管理者でもあるらしいので、私はこれから薬局の本社に電話して今回の件を報告します。どうも彼は誤魔化すのが得意なようですから、食い違いがあった際にはSさんに証人になっていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え?私にですか?」
「はい、是非ともお願いしたいのです。私たち精神障害者の訴えは妄想で片付けられてしまいがちですから...今こうやってお話いただいたことの証人になっていただきたいのです」
「わかりました。では一旦M氏に電話を代わっていただけますか?」
そうしてM氏に電話を渡すと、なんとM氏は電話を切ってしまうではないか?!


「なに勝手に電話を切ってるんですか? 普通は変わるでしょ?」
「え?」
「え? じゃないでしょ? あなたから発信した電話なんだから、あなたが終話させるのが常識じゃないの? 早く電話を掛け直して!」
慌てふためいてM氏は電話を掛け直した。


電話を終えたM氏は、もぞもぞとしているだけで、次の言葉が出ないようだ。仕方がないので私から「結果的に自立支援の薬局変更時に役所からの事前連絡はないと言うことですよね?」と確認してみた。


悪怯れる風もなくM氏は、
「はい...そうのようでした」と宣う。
「そのようって? あなたご存知なかったとでも?」
「いや、今までは連絡があったような...」
「まだそんな風に誤魔化そうとしてるんですか?」
「いや、誤魔化すだなんて...」
「あなた、お幾つ?」
「え?」
「あなたの年齢を聞いているんです。お幾つなの?」
「...54歳です」


これには少し驚いた。なんと私の2つ下である。彼は、どう見ても六十代にしか見えない。


「あら...私と変わらないじゃないの...まぁそれはいいとして、あなたは54にもなる今までそうやって適当に誤魔化して生きてきたんですか?」
「いや...」
「では、こんな風にコロコロ発言を変えるのは初めてだって言うんですか?」
「え...」
「初めてじゃないでしょ? 慣れているもの。そうやって今まで誤魔化しながら仕事をしてきたってことです?」
「そんなことはないです」
「ふむ。まぁいいわ...本社にこの件は報告しますから、今回は誤魔化せないですよ? 証人もいることだし」
「...はい」
しばし沈黙。
「私はどうすればいいですか?」とM氏。
「帰ってください」と私。
「え?」
「お仕事中でしょ?」
「はい」
「もう用は済んだから帰ってください」
「え?けれど...」
「私は帰宅してから家で本社に今回の報告をします。私の報告によって本社がどう対応するのかは私には分かり兼ねる。本社が動いた時に、あなたはあなたなりの言い分をどうぞ。それは私には関係ないから。今日はもう結構ですから、あなたは帰りなさい」
「は?」
「いいから帰る!」
「はい」



自転車に跨り帰っていくM氏の後ろ姿にどことなく悲哀があって、なんだかもう「どうでも良いかな」という気持ちになってくる。
それでも本件をただ薬局を変えるだけで済ませてしまうのは、却って問題だと気を取り直して薬局の本社を調べて電話をかけた。


時刻は18時を回っていた。営業時間かは定かではない。
電話の呼び出し音が鳴る。電話は繋がった。




果たして、その結果は?





確かに怒りの感情で相手をコントロールしている。
どんな失礼も怒りを抑えて冷静な対応をしたところで、物事がこうもスムーズに展開していくだろうか? あのように上から目線で人に対するような管理者なぞは、場合によっては怒りでコントロールすることも必要かと思われる。
そうでなければ、こちらが一方的に相手のいいなりになるか。
その場では流しておいて、本社に通報するのがスマートかも知れないし、怨みを買うこともないだろう。
今回の場合は、その場で言い負かせ従わせたいという、私の目的が見えていて結構だ。むしろ望むところである。







再びのコーヒーブレイク。



では、また。














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