遠い箱

精神障害を持つアラ60のヘンテコな毎日と、日々変化する心情を綴ります。

お母さん。

母の夢をみて、目が覚めた。
目が覚めたというよりも、目を覚ましたといった方が正しいのだろう。

途中で夢と気づいて、そのまま夢を見続けるのに抵抗を覚えたから、無理やり眠りから離れたのだ。
目覚めてからひととき、母が恋しくて泣いた。
「お母さん」
小さく声に出して、抑えていた感情を解放した。


母に会いに行きたいけれど、傷つくのも傷つけるのも怖くて実行できずにいる。


昨日参加した、区が主催する「家族向けアルコール問題」のミーティングで、アルコール依存症の娘を持つ母である初老の女性のシェアを聞いた。
この人の孫にあたる男の子の話題が中心だったから、つられて私の子供時代も思い出されたようだ。
聞いていて、激しい怒りが湧いた。
まさに虐待だ。
私が体験した、あの苦しかった子供時代が、彼のそれに重なる。


小学生4年生の子供が母親のアルコール問題に巻き込まれて、自殺を考える。
彼はちょっと悪さをするらしい。
けれど犯罪は決して犯さないという自制心が、幼い彼にはしっかりとある。
苦しみを吐き出せる、安全な場所がある。
話を聞いてくれる、明るいおばあちゃんがいる。
アルコール問題を芯から理解している大人たちが、彼を見守っている。


苦しみを誰にも打ち明けられず、面倒見の良いしっかりしたお姉ちゃんを演じているうちに壊れてしまった私とはちょっと違う彼の境遇が、少しだけ羨ましかった。
死にたいではなく、消えたい。
私なんか生まれてこなければ良かった。
そんな風に鬱々と過ごした、私の子供時代。


それでも思い出したのだ。
何もできなかった私に、洋服を着せてくれた母の手。
一つひとつボタンをかけてくれた、あの母の優しい手を。


愛する夫に拒絶されて、いつも寂しそうな、深い洞窟のような目をしていた母。
すべてを捨てて信じた人に裏切られて、ぼんやりとお酒に溺れていくしか術がなかった母。


自分には得られない愛を、一心に注がれる長女が少しだけ憎らしかった?
けれど、それがすべてではないよね?


分かってるんだ。
分かっているのに許すことができない。
そんな自分が嫌になる。


お母さん。


生きているうちに会えたらいいな。
笑って思い出話がしたいな。


そうできるといいなぁ。


そんな日がいつか訪れるといいなぁ。