遠い箱

精神障害を持つアラ60のヘンテコな毎日と、日々変化する心情を綴ります。

嘘吐きじゃないよね。

就労移行支援センターで話が弾む男性と知り合って、おしゃべりが弾んだ。残念ながら彼はすでに就職が決まっていて、間も無く退所する予定だ。親切な彼は他の利用者に私を紹介してくれた。

その紹介の私を示す言葉の中に「嘘吐きじゃないよね」があった。

私はちょっと戸惑い、

「いやぁ、うーん、けっこう誤魔化すというか...」

彼はハッとして、

「あ、嘘吐きじゃないという言い方は変だね。正直って言えば良かった」

と、笑顔でフォローした。

 

 

そんな会話の後、プログラムを一つ受けてから、所長と今後のスケジュールについて話した。障害福祉サービス受給者証を発行され、事業所と利用契約を交わすまで大体1ヶ月程度かかるとのこと。それまでは仮利用というか、まぁそんな感じで週3日までプログラムを受けられると言う。

 

そんなわけで週3日の予約を、2週間分してきた。

今日はお休みなのでダラダラ過ごしている。

 

昨日の精神科の診察で薬が変わったので薬局に行かなきゃならないが、なんだか外出する気にならない。私は長く一人の精神科医の診療を受けてきたが、彼とは馴染みすぎていて診察室では世間話ばかりだった。そのせいか自分の症状について触れていなかったことに、昨日の新しい主治医との診察時間に気づいた。

 

「人前でいつも緊張しているので、とても疲れます。今日は就労移行支援センターに行ったのですが、緊張のせいか頭痛が酷いです」

新しい主治医は「そうですか。今までの処方を見ると緊張を暖和させるお薬は出ていないようですが」と言う。そこで私は以前の主治医に、自覚症状を話していないことに改めて気づいたのだ。

 

今回、薬が変わったから今日中に薬局に行かなくちゃと思いつつ、なんだか気合が入らない。気合たって近所なのだし適当に支度すれば良いのだけど、それすら面倒だ。何もしない日は一日パジャマでダラダラ過ごすのが好きなのだ。

 

たいていの人は病院の近くの薬局で薬を処方してもらうのだろうけれど、私は自宅に近い薬局を指定している。病院付近の薬局は患者同士で顔を合わせる可能性が高いから、なんとなく気がひける。近所の薬局を指定しておくと、精神科以外の病院にかかった時にお薬手帳をおどおど見せずに済む。私が精神科にかかっていることを馴染みの薬剤師が知っているから。

 

そう、この「病気知られてオドオド」、これをなくしたいと常々思っている。

堂々と私は精神病者だ、と口に出せない己の姑息さが悲しい。

 

昨日もこの姑息から、一つの嘘をひねり出した。

 

一昨日、就労移行支援センターでもらった書類を、私はフィットネスクラブのトイレに忘れてきた。何故、トイレなのかというとこれまたコソコソな姑息さが悲しいのだけど、人目のあるところで就労移行支援の書類を広げるのが嫌だったからトイレの中で見たという情けなさだ。

 

誰も人の書類なんて見てないって言うの! また万が一見られても良いじゃないか!

 

って、絶対に嫌だ。フィットネスクラブに屯ろする噂好きの暇人マダムに万が一見られでもしたら(いやもう覗き見するくらいの図々しさを彼女たちは持つ)、格好の餌食になるに違いないもの。

 

「あら〜ご存知? Mさんって障害者なんですってぇ〜」

 

うわー、声が聞こえてきそうだ。不味い!

 

妄想はやめにして。けれど本当にそういった余計な心配事のタネを、私は常日頃作らない努力をしている。

 

そんなこんなで昨日、就労移行支援センターで失くした書類についての嘘を吐く。

「飲み物をこぼしたので、新しい書類をください」

こんな他愛のない嘘でもバレるんじゃないかとドキドキする。

だって考えてみて欲しい。万が一、あの書類を拾った人が余計な親切心を起こしてセンターに電話をかけてきたとしたら?

書類に私の名前はないが、事業所の電話番号が明記されていたし、新しい利用希望者は私以外に今現在ではいないのだ。私が失くした書類とバレてしまうではないか?!

 

で、結局、こんな他愛のない嘘すら吐き通せず、

「すみません。私、嘘を吐きました」

と告白するに至った。

 

 

あ〜ぁ、なんだかなぁ...。